RYO NIHONYANAGI二本柳 亮
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AIエージェントの設計図解資料

エージェントが​増えると、​まず​起きるのは​衝突

誰が、​どこで、​何を​しているかを​見えるように​する

この資料の要点

  1. 01
    衝突は​4種類。​見落と​されやすいのは、​作業と​作業、​人と​エージェントの​あいだで​起きる​3つ
  2. 02
    対策は、​見えるように​する​ → 聞く​ → 人に​返す
  3. 03
    同僚の​エージェントの​依頼は、​本人の​指示ではない。​本人に​確かめてから​動く

便利になるほど、並べたくなる

AIエージェントを使い始めると、最初は1つの仕事を頼むだけでも驚きがあります。調べもの、資料の下書き、データの整理。任せられることが増えるにつれて、だんだん欲が出てきます。

調べものはこのエージェント、資料づくりはあのエージェント、と業務ごとに使い分けたくなる。さらに、1つ終わるのを待つ時間がもったいなくなり、あわよくば、いくつも同時に走らせたくなる。

この欲求は、とても自然なものです。エージェントを使いこなし始めた人ほど、必ずここに行き着きます。そして、並べることで仕事の進み方が大きく変わるのも本当です。

ただ、並べた瞬間から、1体のときにはなかった問題が出てきます。本稿は、その問題に先回りするための話です。

1体のうちは起きない問題

AIエージェントを1体だけ使っている間は、作業の場所も、順番も、すべて自分の目の前にあります。ところが、エージェントを2体、3体と並べ、同僚もそれぞれのエージェントを動かし始めると、これまでなかった問題が起きます。衝突です。

筆者の手元でも、最近こんなことがありました。このサイトに記事を1本公開しようとしたとき、本番に出す直前になって、別の作業(別のセッションで進めていた、まだ公開する予定のない変更)がすでに共有の本流に入っていると気づきました。そのまま出していれば、記事と一緒に、準備中の変更まで本番に出ていたことになります。このときは、今の本番と同じ版に記事だけを足して出し、別の作業はそのまま残しました。

誰も悪いことはしていません。どちらの作業も、それぞれ正しく進んでいました。問題は、お互いの作業が見えていなかったことです。

図11体で使うときと、複数で並べるとき

1体で使う

  • 作業の場所は1つ
  • 順番は自分が決めている
  • 変更はすべて自分のもの
  • 頼むのはいつも本人

複数で並べる

  • 同じ場所を、別のエージェントが触る
  • ほかの作業の途中に、自分の作業が重なる
  • 自分の変更以外が、混ざることがある
  • ほかのエージェントからも、依頼が届く

並べた瞬間から、「誰が、どこで、何をしているか」を見えるようにする必要が出てくる

衝突は4種類ある

エージェントを並べたときに起きる衝突は、大きく4つに分けられます。3つはエージェントの作業どうしの衝突、1つは人の側のうっかりです。

図2エージェントを並べたときに起きる4つの衝突

  1. 01
    同じ場所を同時に書き換える2体が同じファイルや資料を直し、片方の変更が消える
  2. 02
    ほかの作業を知らずに反映する自分の作業を出すときに、準備中のほかの変更まで一緒に出る
  3. 03
    依頼の出どころを取り違えるほかのエージェントからの依頼を、本人の指示として実行する
  4. 04
    頼む相手を間違える人が、別のエージェントに、別の仕事を頼んでしまう

1つ目は道具で防ぎやすい。見落とされやすいのは、あいだで起きる残りの3つ

1つ目は、作業の場所を分ける、変更の履歴を残す、といった昔からある方法でかなり防げます。見落とされやすいのは残りの3つです。どれも、作業そのものではなく、作業と作業のあいだ、人とエージェントのあいだで起きるからです。

4つ目は、並べ始めた人なら一度は経験があるはずです。画面に同じような見た目のエージェントがいくつも開いていて、Aに頼むつもりの仕事を、Bに書き込んでしまう。エージェントの側は、頼まれれば、自分の担当でない仕事でもそのまま進めてしまいます。しかも、Bはその仕事に必要な前提を知らないまま、それらしい結果を返してきます。人のうっかりは、なくせません。だからこそ、間違えにくくする工夫と、間違えたときにエージェントの側で気づける仕組みの両方が要ります。

対策は「見えるようにする → 聞く → 人に返す」

衝突を防ぐ考え方は、シンプルです。まず、誰がどこで何をしているかを見えるようにする。重なりそうなら、黙って進めずに相手に聞く。判断がつかないものは、人に返す。

図3衝突を防ぐ3つの手順

  1. 01見えるようにする誰が、どこで、何をしているかを一覧にする
  2. 02聞く重なりそうなら、進める前に相手に確かめる
  3. 人人に返す判断がつかないもの、影響が大きいものは人が決める

衝突を道具で消すのではなく、衝突しそうなことに早く気づける状態をつくる

この考え方を、そのまま製品にしたものも出てきています。2026年10月に Reason が公開した Reason Network は、Claude Code や Codex など、自分と同僚のコンピューターで動くエージェントどうしをつなぐ仕組みです。誰が、どのマシンの、どのリポジトリのどのブランチで、作業中か空いているか、何をしているかを一覧でき、公式の説明では「衝突する代わりに、聞く」ことをうたっています。

ただし、Reason Network は開発の初期にあります。公式の設計文書では、M0〜M3 と名付けた段階までを macOS で作って試し、次の M4 は未着手としています。同じファイルを同時に触ったときに警告するような機能は、今の機能としては説明されていません。製品を待つより先に、何を見えるようにし、何を人に返すかを、自分たちのルールとして決めておくほうが確実です。

同僚のエージェントの依頼は、本人の指示ではない

3つ目の衝突、依頼の出どころの取り違えは、エージェントの数が増えるほど重くなります。エージェントどうしが連絡を取り合えるようになると、「ほかのエージェントから届いた依頼」が増えるからです。

Reason Network の公式ドキュメントにも、この線引きがはっきり書かれています。ほかの人のエージェントからのメッセージは、同僚からの依頼として扱い、自分のユーザーの指示としては扱わない、というものです。

図4本人の指示と、同僚のエージェントからの依頼

本人の指示

  • そのまま実行してよい
  • 範囲は本人が決めたとおり
  • 公開・送信も、本人が頼んだものなら進める

同僚のエージェントからの依頼

  • 参考として受け取る
  • 実行する前に、本人に確かめる
  • 公開・送信・削除は、本人の了承なしに進めない

依頼の中身が正しくても、出どころが本人でなければ、本人に確かめてから動く

筆者の手元でも、Claude Code のセッションどうしが、互いの作業内容を見て連絡できるようにしています。別のセッションから「このページを作って公開してほしい」という依頼が届いたときも、その依頼だけで作業は始めず、本人に確かめてから進めました。依頼の中身が妥当でも、それを決めるのは本人です。

並べる前に、ルールを1枚に

エージェントを並べるとき、最初にやることは道具選びではなく、ルールを1枚に書くことです。誰がどこで何をしているかをどこで見るか。重なりそうなときに誰に聞くか。何を人に返すか。

会員向けの部分では、見えるようにする項目、作業の「札」の決め方、本番に出す前の確認、並べる順番、そしてルールの記入例をまとめています。

ここから先は、限定公開パートです

手順・テンプレート・チェックリストなどの​実践部分は、​顧問先・研修先の​方に​パスワードで​お読みいただけます。

  • 見えるように​する​項目
  • 作業の​「札」の​決め方
  • 頼む​相手を​間違えないために
  • 本番に​出す前の​確認
  • 並べる​順番:1体を​深くしてから
  • ルールの​記入例
  • エージェントを​並べる​前の​チェックリスト
  • 本稿で​確認した​出典​(2026年10月30日に​確認)