RYO NIHONYANAGI二本柳 亮
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AIエージェントの設計図解資料

常駐する​AIを、​会社で​どう​使うか

dots・Muse・Grok Bot の​時代に、​「誰と​して​動くか」から​設計する

この資料の要点

  1. 01
    常駐型で​変わるのは​AIの​賢さより、​AIと​人の​距離。​人の​仕事は​「指示」から​「承認」へ
  2. 02
    組織で​詰まる​理由は​「誰と​して​動くか」。​本人の​分身と、​専用IDの​役割を​分ける
  3. 03
    エージェントは​一人​ひとりに、​手順と​境界と​柵は​会社に、​最後の​一押しは​人に

「呼ぶAI」から「そばにいるAI」へ

これまでのAIは、こちらから呼んで使うものでした。チャット欄を開いて頼み、答えが返ってきたら閉じる。頼まなければ、何も起きません。

2026年の夏から秋にかけて、その前提を変える製品が続けて出ました。専用のクラウドのコンピューターを持ち、こちらがパソコンを閉じても動き続け、必要なときだけ戻ってくる。メールやカレンダー、チャットにつながり、頼む前に動くこともある。本稿では、こうした個人に付くAIを「常駐型エージェント」と呼びます。

図1呼ぶAIと、常駐するAIの違い

呼ぶAI(これまで)

  • 頼んだときだけ動く
  • 会話を閉じたら止まる
  • 1回の依頼に1回答える
  • 前提は毎回こちらが渡す

常駐するAI(これから)

  • 目標を渡すと、こちらが離れても進める
  • 専用のクラウドのコンピューターで動き続ける
  • 途中経過や判断が必要なことを知らせてくる
  • 使うほど好みや仕事の基準を覚える

頼む相手から、任せる相手へ。人の仕事は「指示」から「目標と範囲を決めて、承認する」へ移る

2026年秋に出そろった主な常駐型エージェント

各社の公式発表で確認できた範囲を並べます(本稿執筆時点:2026年10月23日)。

図2主な常駐型エージェント(2026年10月時点)

dots(OpenAI)
Muse(Meta)
Grok Bot(xAI)
発表
2026年9月29日
2026年9月
個人向け 2026年8月11日、法人向け 9月3日
動く場所
専用のクラウドのコンピューター。24時間、目標に向けて作業
専用のクラウドの仮想マシン。アプリを閉じても続く
専用のクラウドのコンピューター。承認が必要なときだけ戻る
話しかける場所
ChatGPT、Slack、Teams
Muse のアプリなど(米国)
デスクトップ、iOS
組織での管理
Enterprise は管理者が有効化(既定はオフ)
組織向けの管理機能は、公式の案内に記載なし
法人向けに、ログイン管理・通信先の制限・監査ログ

3つとも「専用のクラウドで動き続け、大事な操作の前に人の承認を求める」点は同じ

ほかにも、Google は Gemini Spark(2026年5月発表、米国で先行提供)、Anthropic は Claude Duet(2026年10月21日発表、米国でリサーチプレビュー)を出しています。Slack のチャンネルに常駐するチーム向けの Claude Tag(2026年6月発表)のような形もあります。

何が変わるか

常駐型エージェントで変わるのは、AIの賢さそのものより、AIと人の距離です。

図3常駐型エージェントで変わる4つのこと

  1. 01
    頼む前に動く接続したアプリを見て、気づいたことを先に知らせる
  2. 02
    目標を渡して離れられる手順を一つずつ指示しなくても、途中経過を持って戻ってくる
  3. 03
    本人の道具の中で働くメール、予定、チャット、ファイルに、本人がつないだ範囲で入る
  4. 04
    人の仕事は承認に寄る送信・支払い・公開の前に、人が中身を見て押す

たとえば OpenAI は、dots の発表の中で、初期テスターの dot が請求し忘れていた取引先に気づき、請求書を作って、テスターの承認を得てから送った例を紹介しています。こちらが頼んでいないことに気づき、送る直前で人に戻す。常駐型の働き方をよく表した例です。

個人では便利なのに、組織に入れると詰まる

一人で使う分には、常駐型エージェントはすぐに便利さを感じられます。ところが会社の仕事に入れようとすると、多くの場合ここで止まります。理由はシンプルで、このAIが「誰として」動くのかを決めないと、会社のデータに触らせられないからです。

各社の設計を見ると、答えは大きく2つに分かれています。

図4エージェントは「誰として」動くか

本人の分身として動く

  • 本人のアカウントと権限の範囲で動く
  • 本人より広いものには触れない(Grok Bot は公式に明記)
  • 指示できるのは本人だけ(dots は公式に明記)
  • 向いている仕事:本人の受信箱・予定・資料まわり

専用のIDを持つ役割として動く

  • 会社がそのエージェントにIDと権限を与える
  • 誰が頼んでも、決まった範囲でだけ動く
  • 記録には、そのエージェントの名前で残る
  • 向いている仕事:請求書処理・問い合わせ受付など、部署の持ち場

「私の分身」と「部署の持ち場」を混ぜないことが、組織で使う出発点

dots は、個人の dot とは別に、会社が固有のIDと認証情報を与えて特定の役割を担わせる「業務特化型 dot」を、企業向けの試験導入から始めると発表しています。Claude Tag も、チャンネルではClaude専用のアカウントで動き、1対1の会話だけは本人として動きます。分身と役割を分けるのは、各社に共通する流れです。

権限を整理したあとの、理想の形

分身と役割を分け、権限を整理し終えた会社では、次のような形になると考えています。

図5権限を整理したあとの、常駐型エージェントの理想の形

  1. 人目標と範囲を決め、最後に押す
    • 送信
    • 支払い
    • 社外への公開
    • 契約・削除
  2. 一人ひとりの分身エージェント本人の権限の中で、先回りして動く
    • 受信箱の見張り
    • 予定の調整
    • 資料の下書き
    • やり残しの知らせ
  3. 部署の役割エージェント専用のIDで、決まった持ち場を受け持つ
    • 問い合わせの受付
    • 請求書の処理
    • 週次の集計
  4. 会社が配る手順(Skill・プラグイン)どのエージェントも、同じ手順と基準で動く
    • 業務の手順
    • 判断の基準
    • 人が止める地点
  5. データの境界誰が何を見てよいかは、元の保管場所の権限で決まる
    • 個人:メール・予定
    • 部署:共有フォルダ
    • 全社:規程・ナレッジ
  6. 管理者の柵有効化・接続先・記録を、会社として握る
    • 誰に使わせるか
    • どこにつなぐか
    • 何を記録するか

エージェントは一人ひとりに。手順と境界と柵は会社に。最後の一押しは人に

ポイントは3つです。

  1. エージェントの数は増えても、手順は1つ。 分身も役割も、会社が配った同じSkillで動きます。人によって出てくるものの質がばらつく問題は、ここで止まります(Skillの配り方は「スキルとプラグインで、社内の作業手順を標準化する観点」で整理しています)
  2. 見てよいものは、元の保管場所が決める。 エージェントのために新しい権限表を作るのではなく、SharePoint や Google Drive などの既存の権限をそのまま使います(考え方は「会社のRAGは、何から作るか」で整理しています)
  3. 人は「押す人」になる。 作業の大半はエージェントが進め、取り返しのつかない操作の直前だけ、人に戻ってきます

ただ、実際に動かしてみると、この「人に戻ってくる」が多すぎて、任せた仕事が最後まで終わらないという壁に当たります。エージェント側の安全の仕組みが厳しく、承認待ちで止まってしまうのです。この壁との向き合い方は、続きの限定公開パートで整理しています。

ここから先は、限定公開パートです

手順・テンプレート・チェックリストなどの​実践部分は、​顧問先・研修先の​方に​パスワードで​お読みいただけます。

  • SHIFT AI でも、​常駐型は​まだ​進んでいない
  • な​ぜ進まないのか​(見立て)
  • 「承認で​止まる」は、​なくならない​前提で​設計する
  • 進め方:読むだけの​分身から​始めて、​役割へ​広げる
  • 管理者が​決めて​おく​こと​(dots の​例)
  • 権限の​設計シート​(記入例つき)
  • 導入前の​チェックリスト
  • 本稿で​確認した​出典​(2026年10月23日に​確認)