「どこにAIを使えばいい?」に答えられない理由
AIの話になると、よく出てくる問いがあります。「うちの仕事で、AIはどこに使えるんですか?」
この問いに、すぐ答えるのは難しいものです。AIに詳しくないからではありません。業務が、まだ頭の中にあるからです。
毎日やっている仕事ほど、手順は体が覚えていて、言葉になっていません。誰を待っている時間があるのか、どこで同じ情報を二度入力しているのか、何を見て判断しているのか。本人も意識していないことが、たくさんあります。
この状態でAIの使いどころを考えても、話は「議事録の要約」「メールの下書き」のような、思いつきやすいところで止まりがちです。本当に時間を取られている場所は、別のところにあるかもしれません。
だから、AIを入れる前に、まず業務を地図にします。
1つの業務を、4色で見る
地図といっても、難しいものではありません。業務を1つ選び、始まりから終わりまでの手順を並べて、それぞれを「誰が手を動かしているか」で塗り分けるだけです。
図1手順を塗り分ける4つの色
- 01
自分自分が手を動かしている手順
- 02
ほかの人同僚・上司・取引先が手を動かしている手順
- 03
相手待ち返事・承認・入金などを待っている時間
- 04
ツール・AIすでに仕組みやAIが動かしている手順
塗り分けるだけで、「自分の時間がどこに消えているか」と「止まっている場所」が見える
こうして並べてみると、意外なことに気づきます。作業そのものより、待っている時間のほうが長い。同じ情報を、別の場所にもう一度入力している。つくっているのに、誰も読んでいない資料がある。
手順ごとに、5つに見立てる
地図ができたら、手順を1つずつ見て、次の5つのどれに当たるかを考えます。上から順に当てはめるのがコツです。
図2手順の見立て方
- 01
なくせる転記、コピー&ペースト、確認のための確認、誰も読まない資料。流れを変えると手順ごと消える
- 02
流れごと見直す手順は残るが、待ちが長い、承認が何段も重なる、同じ情報が別々に届く
- 03
人がやる関係づくり、責任を伴う判断、お金や安全に関わる決定
- 04
AIに任せる入力と出力の形が決まっていて、繰り返し行う。間違えても人の確認で気づける
- 05
AIと一緒にやる下書き・要約・比較・チェック。AIが土台をつくり、人が判断して仕上げる
最初に探すのは、AIの使いどころではなく「なくせる」と「流れごと見直す」
見落とされやすいのが、最初の2つです。
たとえば、営業から届いた一覧を台帳に書き写している手順は、AIで速くするより、営業が台帳に直接書けるようにしたほうが早い。手順そのものがなくなるからです。上長の確認に毎回2日かかっているなら、AIで作業を速くしても待ちの2日は縮まりません。確認を「金額が基準を超えるものだけ」にするほうが、ずっと効きます。
相手待ちは、AIでは縮まらない。ここを先に見つけておくと、AIに期待しすぎることも、AIのせいにすることもなくなります。
スキルにすると、1人でも地図がつくれる
この地図づくりは、本来は聞き手がいたほうが進みます。自分の業務を自分で棚卸しするのは、思った以上に難しいからです。
そこで、AIが聞き手になって地図づくりを手伝うスキルをつくりました。
図3業務の地図スキルの進み方
- 01聞く業務の名前、ゴール、きっかけ、手順、待ち、困りごとを1問ずつ
- 02描く今の流れをマーメイド図にして、4色に塗り分ける
- 03見立てる手順ごとに5つに分け、見立ての色で塗り直す
- 人まとめる最初に手をつける3つと、相談用の要約を出す
1つの業務で30〜45分。完璧な図より、まず1枚
AIは1回に1問だけ聞き、答えを受け止めてから次に進みます。わからないところを推測で埋めることはせず、「未確認」と書きます。社名や人名は、仮の名前で答えてかまいません。
見立ては、AIが決めるものではありません。理由を添えた提案として出し、最後に決めるのは本人です。
見本:月末の請求書発行(架空)
スキルには、架空の業務での出力の見本を同梱しています。経理担当が「月末の請求書発行」について答えると、AIは次の3枚の地図を描きます。
1枚目は、今の流れです。誰が手を動かしているかで塗り分けます。
① 今の流れ(誰がやっているか)
自分ほかの人相手待ちツール・AI
② 見立ての地図(どう変えるか)
なくせる流れごと見直す人がやるAIに任せるAIと一緒にやる
2枚目は、見立ての地図です。同じ流れを、今度は見立ての色で塗り直します。赤の点線が「なくせる」、オレンジの太枠が「流れごと見直す」。この例では、AIを入れる前に手をつけられる場所が3つ見つかります。どの手順をどう見立てたかは、表で理由つきで出ます。
| 手順 |
今やっている人 |
見立て |
理由 |
| 営業が納品一覧を送る |
営業 |
流れごと見直す |
一覧と台帳に、同じ情報が別々の形で届いている |
| 請求台帳に入力 |
自分 |
なくせる |
営業が台帳に直接入れれば、転記そのものが要らない |
| 請求書を1件ずつ作成 |
自分 |
AIに任せる |
台帳から機械的に作れる。金額は人の確認で誤りに気づける |
| 上長の金額確認待ち |
上長 |
流れごと見直す |
待ちが作業より長い |
| PDFにしてメールで送付 |
自分 |
AIと一緒にやる |
文面の下書きはAI、宛先と添付の確認は人 |
| 台帳に入金日を入力 |
自分 |
人がやる |
お金に関わる確認。未入金への連絡は関係にも関わる |
3枚目は、見直したあとの流れです。「なくせる」手順は消え、「AIに任せる」手順はツール・AIの色に変わります。
③ 見直したあとの流れ
自分ほかの人相手待ちツール・AI
自分の手は「確かめる・送る・連絡する」に集まり、上長の確認待ちは基準を超えるものだけになります。
最後に「最初に手をつける3つ」と、社内や専門家に相談するときにそのまま渡せる「相談用の要約」が出ます。
地図があると、相談が早い
業務の改善を誰かに相談するとき、最初の1時間は、たいてい業務の説明に使われます。どんな流れで、誰が関わっていて、どこで困っているのか。聞く側も、全体がつかめるまでは提案ができません。
地図と要約が手元にあれば、相談は説明からではなく、答え合わせから始められます。「この待ちは減らせそうですか」「この転記はAIに任せて大丈夫ですか」と、具体的な問いから話せるからです。
このサイトの導入事例「社長の頭の中にある業務を、地図にする」も、同じ考え方で進めたものです。
スキルを配布しています
業務の地図スキルは、誰でも使えます。Claude Code にそのまま置けるほか、Claude や ChatGPT などのチャットに中身を貼っても使えます。
業務の地図スキルをダウンロード(ZIP)↓
使い方は、同梱の README にまとめています。
- ZIPを展開し、
workflow-map フォルダを .claude/skills/ に置きます
- Claude Code で「業務の地図をつくりたい。workflow-map のスキルで、インタビューから始めてください」と伝えます
- AIの質問に、1つずつ答えます
チャットで使う場合は、SKILL.md と references/ の3つのファイルの中身を最初のメッセージに貼り、「この手順で、私の業務の地図をつくってください」と伝えてください。図が画面に表示されないときは、図のコードを mermaid.live に貼ると見られます。
できあがった要約と図をもとに相談したい場合は、お問い合わせフォームに要約を貼ってお送りください。
始める前のチェックリスト