新しいツールは毎月出る。比べる前に、任せたい仕事を書く
AIの新しいツールは、毎月のように出てきます。発表を見るたびに「うちも入れたほうがいいのでは」と感じ、比較表を作り始める。けれど、比較表から始めると、判断はたいてい「どれが一番すごいか」に流れます。会社が決めたいのは、どれがすごいかではなく、自分たちの仕事に入れる意味があるか です。
2026年の秋、個人やチームに常駐するAIエージェントが続けて出ました。OpenAI の dots、Meta の Muse、xAI の Grok Bot、Anthropic の Claude Duet と Claude Tag です。筆者もひと通り調べ、比べました。けれど、自分の仕事を書き出して照らし合わせると、仕事の大半は、今ある組み合わせ(仕事の振り分けと、すでに使っているエージェント)で足りる という結論になりました。新しく試す価値があったのは、チームで共有して使う形の1つだけでした。
製品から考えると「何ができるか」に目が行き、仕事から考えると「何が足りないか」に目が行きます。選び方の出発点は、後者です。
図1 製品から考えるか、仕事から考えるか
製品から考える 新しい発表を見て、機能を比べる 「できること」の多さで選ぶ 入れてから使い道を探す 道具が増え、どれも中途半端に使う 仕事から考える 任せたい仕事を先に書き出す 今の道具で足りない所だけ探す 使い道が決まってから試す 入れない判断も、成果として残る 比較表を作る前に、任せたい仕事のリストを作る
決める順番
新しいツールを入れるかどうかは、次の5つの順番で決めます。いきなり候補を比べ始めないことが、一番のコツです。
図2 新しいAIツールを入れるかどうか、決める順番
人 仕事を書き出す 任せたい仕事と、今どこで止まっているか 02 今の道具で足りるか 手順を書く、振り分けを変える、で解けないか 03 足りない所だけ候補を見る 足りない理由に合う道具だけを比べる 04 小さく試す 範囲・期間・上限・やめる条件を先に決める 人 続けるか決める 試した結果で、広げるか、やめるか 2番目で終わることが多い。それで正解
2番目の「今の道具で足りるか」で止まることが、実際にはかなり多くあります。足りないと感じる原因が、道具ではなく、手順が書かれていないことや、仕事の渡し方にあることも多いからです。手順の書き方は「AIのSkillsとは何か 」、仕事の渡し方は「エージェントを「チーム」にする 」で整理しています。
見る観点は5つ
候補を比べる段階に来たら、機能の多さではなく、次の5つを見ます。どれも、入れたあとに「思っていたのと違う」となりやすい所です。
図3 AIツールを選ぶときに見る5つの観点
01 誰のための道具か 個人に付くのか、チームで共有するのか
02 お金のかかり方 人数で払うのか、使った量で払うのか。上限はかけられるか
03 権限と承認の厳しさ 誰として動くか。どこで人の承認を求めて止まるか
04 データの扱い どこに保存され、学習に使われるか。管理者が何を決められるか
05 やめやすさ やめるとき、作ったものや記録を持ち出せるか
機能の差より、この5つの差のほうが、入れたあとの手間を左右する
とくに見落としやすいのが、3つ目の「権限と承認の厳しさ」です。常駐型のエージェントは、安全のために、大事な操作の前で人の承認を求めて止まります。たとえば dots は、利用者が決めるルールで、もともと組み込まれた安全の仕組みを外すことはできません。任せたい処理が承認のたびに止まるなら、どれだけ機能が多くても、仕事は最後まで終わりません。この点は「常駐するAIを、会社でどう使うか 」で詳しく書いています。
個人の道具とチームの道具は、別物として選ぶ
名前や見た目が似ていても、個人に付く道具とチームで共有する道具は、選び方が違います。同じ比較表に並べると、判断を誤ります。
図4 個人に付く道具と、チームで共有する道具
誰が頼むか
持ち主だけ
その場にいる人なら誰でも
何として動くか
本人の分身として、本人の権限の範囲で
チームの役割として、組織が決めた範囲で
作業の見え方
本人にしか見えない
チームから見え、途中から引き継げる
決めるのは誰か
本人(会社は使ってよいかと範囲を決める)
管理者(接続先・お金の上限・使う場所)
例
Claude Duet、Muse など
Claude Tag など
個人の道具は「各自の生産性」で、チームの道具は「仕事の受け渡し」で評価する
「入れない」も成果
調べた結果「今回は入れない」と決めることは、失敗ではありません。何を調べ、なぜ入れなかったかが残っていれば、次に似たツールが出たとき、同じ調べものを最初からやり直さずに済みます。
会員向けの部分では、判断に使う評価シート、お金のかかり方の読み方、小さく試すときの決めごと、そして「入れない判断」と「小さく試す判断」の記入例を載せています。
ここから先は、限定公開パートです 手順・テンプレート・チェックリストなどの実践部分は、顧問先・研修先の方にパスワードでお読みいただけます。
評価シート:観点ごとの問いと確かめ方 お金のかかり方の読み方 小さく試すときに、先に決めること 入れたあと、何を見るか 記入例:入れない判断と、小さく試す判断 新しいツールを検討するときのチェックリスト 本稿で確認した出典(2026年10月24日に確認)